第八章 嘘と決意
「昨日、周助さんに会いました」
突然変わった話の内容に、真佐海は静かに耳を傾ける。
「真佐海さんが時々不安そうっていうか、寂しそうっていうか、そんな表情するから心配
で周助さんに聞きに言ったんです。真佐海さんに聞いても、今みたいに黙り込むかはぐ
らかして答えないだろうから」
真佐海は何の反応もしなかった。
何の反応も出来なかった。
統馬の言っている事は全て真佐海の図星だから。
ただ、今のこの時間が早く過ぎてくれる事を願うばかりだった。
「真佐海さんのお母さんが亡くなった事とか、周助さんが一方的に別れたとか、周助さん
の話しを元に考えてみたんだ。そしてら、繋がった。真佐海さんが不安なのは、オレが
離れていくって考えるからだろ?」
「・・・・・・そうだよ。俺は怖いんだよ。母さんが死んで、周助も離れていって。二度
もそんな目にあって。そんなの、ただの被害妄想だって解かってる。それでも怖いん
だ」
統馬を苦しめている。
こんな結果を、真佐海は望んでいなかった。
何よりも苦しめたくなかった統馬を、真佐海自身が苦しめている。
そう思うと、とても複雑な気持ちになった。
「被害妄想じゃないよ。オレは離れていかない。言葉だけじゃ足りないのは解かってるん
だ。でもどういたらいいのか解からない。どうすればいい・・・・・・?」
「俺もわかんないよっ・・・・・・」
時々しゃくりあげるような声を上げて涙を流す真佐海を、統馬はそっと抱きしめる。
真佐海は統馬の胸に顔を埋めた。
「真佐海さんが望むなら本当に、オレなんでもするよ。絶対に捨てない」
これ以上、統馬を苦しめてはいけない。
統馬の重荷になってはいけない・・・・・・
真佐海の中で、そんな声が聞こえた。
統馬に捨てられたら今度こそ、自分は壊れてしまうだろう。