狭い1Kのアパートでストーブの前に座り、統馬はじっと携帯の時計を見つめていた。
店を出て二十分、さっきからずっとこの調子だ。
意味なく狭い部屋を行ったり来たりを繰り返し、携帯をチェックする。
何分経っただろうかと携帯を覗き込んだ瞬間、たった二秒だけ、真佐海から着信が入った。
すぐにかけなおしたが電源が入っていないという機械的なメッセージが流れるだけで電話は繋がらない。
統馬は何かあったのではないかと不安になりながら、ドアを乱暴に開けると、そこには周助の姿があった。
「統馬君の部屋はここだったのか。出かけるようだが、少 しだけいいか?」
自分と目線のほぼ同じ相手をきつく睨み付け、何ですか、と短く問う。
もう統馬ははっきりと確信していた。
真佐海の好きだった相手は周助であると。
「真佐海の傍にいてやってくれ。今あいつは情緒不安定に なってる筈だ。俺のせいでね」
申し訳ないというような顔をしている周助をその場に残し、統馬は階段を一気に駆け下りた。