第五章 安らげる場所
如月の空は薄暗い雲がかかり、雪が降っていた。
普段よく買い物に行くスーパーへの大通りの店は、バレンタインのチョコレートが数多く並んでいる。
だが、どの店も雪のせいであまり人はいない。
この寒さなら当たり前だろうな、と真佐海は思い、凍える手をダウンジャケットの両ポケットに突っ込んだ。
近道をし、正面入り口ではなく西口から入ると、仔犬の里親探しをしていた。
食品に影響が無いように、食品売り場と隔離されている。
何気なく狭いゲージの中にいる仔犬達を見ていると、ふと後ろから肩を叩かれた。
「統馬?ここでバイトしてたの?」
その格好を見ると、ジーンズにセーター、その上に団体オリジナルエプロンを着ていて、明らかにここでバイトをしているようだった。
「二、三日だけ知り合いの代わりで引き受けてたんです。買い物ですか?オレ、もう
上がりなんで、一緒に行きましょう」
その場でさっさとエプロンを脱ぐと、他のバイトたちが白い目で見ている中、その本人は奥の事務室から慌てて自分の荷物を取ってきた。
余程真佐海に会えたのが嬉しいらしい。
「真佐海さん、今日店やってるんですよね?何でこ んな時間に?」
「雪のせいで客が来なくて。暇だったから食料調達に来たんだ」
確かに、と苦笑いを零しながらも、真佐海が持っていた籠をさりげなく持ってくれる統馬に、真佐海は少し頬を染めた。
その顔を隠そうと、統馬の話には相槌を打つだけで、遠慮なく重い物をカゴに放り込んでいく。
しかし、いくらカゴが一杯になり、相当重そうに見えても統馬は顔色一つ、態度一つ変えないでそれを持っていた。