第二章  波乱の幕開け

早めに出てきたはずなのに、席に座って五分後にはホームルームが始まり、その後にはすぐ授業が始まった。

授業といっても今学年の要点チェックのようなプリントを解かされるだけで、殆ど自習と変わらない。


窓から空を見ると、気持ちが良いほど晴れている。

それなのに、真佐海の気分は沈んだままで、授業中もずっと武や周助に言われた事を考えていた。

思い出すだけで頭が痛くなるのに、思い出さずにはいられない。

今までの生活とは明らかに変わるのだ。

生憎、昨晩信じてもいなかった神に願った願いは叶う筈もなく、いつの間にか泣き疲れて眠ってしまっていた真佐海の目は赤く充血していた。

その上、目の下にはうっすらとクマが出来ていて、寝不足のせいか頭痛もする。正確にはこめかみのあたりが脈を打っているのだ。


痛み出したこめかみを押さえていると、見回っていた教師がプリントを解く手が止まったままの真佐海が気になったしく、真佐海に近づいてきた。

「佐伯、具合悪いなら無理しなくていいぞ」

数秒考えた末、これ以上ここにいることは無理だと感じた真佐海は、一言教師に断わり、席を立つと、危なっかしい足取りで保健室へと向かった。

 

「真佐海、大丈夫か?」

扉の開く音で目を覚ますと、ベッドの横に雅也がいた。

「雅也・・・・・・」

体を起こし、ベッドを降りる。

雅也の手には二人分の荷物があった。

それを見て、真佐海は初めて今日が午前授業であるという事を思い出した。

「なんかあったんだろ」

やはり五年間親友として付き合っていた雅也の目は誤魔化せなかったらしい。

小さく頷き、真佐海は仕草で保健医がいるかどうかを訊ねると、雅也は頭を振り、今一番聞きたくない名前を出した。

「先輩と喧嘩でもした?」

真佐海は諦めたように頷く。

昨日の今日ではまだ傷口も塞がっておらず、鮮血が流れ出ているような精神状態のままで学校など来たくなかったのだが、今日は金曜日。

今日が過ぎれば明日明後日は休みだからと自分を励まし、なんとか学校に来たのだった。

「昨日泣いただろ?目が腫れてる。それに碌に寝てないんじゃないのか」

雅也を信用している真佐海は、家の事情や周助と付き合っている事を話していた。