翌日、制服を着て下へ降りていくと、既に周助が朝食を取っていた。

「おはよう」

何事もなかった様に、今までと変わらない態度。

それが妙にむかついた。

「・・・・・・おはよう」

自分でも、イライラしている事が声音から解かる。

もしかしたら洋子に機嫌の悪い理由を聞かれるのでは、と真佐海は一瞬思ったが、そんな事はもうどうでもよくなっていた。

だが、洋子は真佐海たちの扱いが慣れているせいか、昨日の事でただ機嫌が悪いだけだと思い、何も訊ねず、真佐海の前に朝食を出した。


朝食を取り終え、バックを肩にかけて自転車に跨る。

今朝は少し登校時間が早い。

周助と同じ空間に居たくなくて、いつもより早めに家を出た。

 

今まで毎朝一緒に通っていたが今日は一人で、学校までの距離が長く感じる。    

耳にはめたイヤホンからはほぼ最大にして音楽が流れている。

何も考えたくなくて、音量をいつも以上に上げていた。

そのせいで当然後ろから呼ぶ声は聞こえなかった。

「真佐海!」

信号で自転車を止めた直後に後ろから肩を叩かれ、真佐海は我に帰った。

音楽の効果は絶大だったらしい。

辺りを見回すと、もう学校のすぐ傍だった。


「さっきから呼んでたのに、その音量じゃ聞こえなくて当たり前だな」

プレーヤーの静止ボタンを押し、耳からイヤホンはずすとそう言われた。

真佐海を呼び止めたのは藤堂雅也(とうどうまさや)。

真佐海の中学からの親友だった。

真佐海同様に細い体をしているが、日に焼けているせいで、並んでいると色白の真佐海の方が貧弱に見える。

「ごめん。ちょっと考え事してたから・・・・・・」

「なんかあった?」

二人で自転車を進めながらそう訊ねてくるが、真佐海はなんでもない、と首を横に振った。

「顔色悪いぞ。保健室行くか?」


駐輪場に自転車を止め、真佐海は雅也の答えに首を横に振り、教室前で別れた。



自分の教室に行くために横をすり抜けて行った雅也は、心配そうに真佐海の肩を軽く叩いたが、真佐海は雅也を安心させるように笑んで教室へ入った。

第二章  波乱の幕開け