クリスマス
何年か前には、毎週と言ってもいい程よく映画館へ通っていた。それだけ、映画と映画館の落ち着いた雰囲気が好きで、社会人になってからも何度か行きたいとは思っていても、忙しくてそんな暇がなかった。
そのせいか、せめて映画だけでもマンションで一人ゆっくりと環境が整った場所で見たいと、二年前の引越しの際にテレビとデッキを最新の物に取り替えた。DVDも、気に入ったものがあれば買い集め、ラックに並べてある。
けれど、それもここ一年程は理絵に時間を取られ、見る暇を失ってしまっていた。
丁度上映をしている最中なのだろう、ロビーに人は数えるほどで、後十分ほどで始まると言われた三流アクション映画のチケットとホットコーヒーを買って劇場に入ると、時間がまだあるせいか、それとも三流映画のせいか、案の定、人の入りは少ない。
俺は後ろの通路側に座ると、コートを隣の席へ置いてまだ暗い画面をぼんやりと見つめていると、理絵の言葉を思い出した。
仕事優先と言っても、少ない休みには会い、頼まれれば払える範囲で買ってやった。会いたいと言われれば時間を作ろうと努力もしたし、面倒くさくて嫌いな携帯のメールにも返信していた。
それのどこが不満だったのだろう
ぼんやりとそんな事を考えていると劇場内が暗くなり、足元のランプが点灯して予告編が始まった。
興味もない、騒々しい予告編の音を聞いていると突然頭痛がしてきた。疲労のせいかもしれないと思い、目を閉じて音だけを聞いていると、いつの間にか寝入ってしまっていた。