バイト
最終日の四日目。
二日目も三日目も、一日目と同じように昼まで寝て、夜はいろいろな玩具を試された。
でも、それも今日で終わりだ。明日にはバイト代を受け取って、オレは帰ってしまう。
そして、尚吾さんとは『ビデオ屋の店員と客』となるだろう。
もしかしたら一緒に飲みに行ったりするかも知れないけど、尚吾さんに抱かれる事はなくなる筈だ。
たった三日。
優しくされて、一緒に食事をして、いろんな話をしているうちに、いつのまにか好意は恋心に変わっていた。
けれど。
確かめた事はないけれど、部屋の様子なんかに、恋人の影が見えるような気もする。
ベッドに突っ伏しながらそう考えていると、息苦しいような、切ない気持ちで一杯で涙がでそうになった。
滅多に泣かないオレが、だ。
今日が終われば、もうこの部屋には呼んでもらえなくなるかもしれない。
オレは目元をごしごし擦って涙を拭うと、尚吾さんの寝室に入っていった。
「樹君?どうした?」
ベットヘッドのランプだけをつけて、本を読んでいる尚吾さんの膝の上にオレは馬乗りになった。
「尚吾さん、オレを抱いて・・・」
「樹君?泣いてたのか?」
真っ赤になった目に気づいたのか、馬乗りになっていたオレをベッドに座らせると、心配そうに尚五さんはうつむいているオレの顔を覗き込む。
「俺が何かしたか?」
オレは静かに首を横に振った。
「ならなんで泣いているんだ?」
心配そうにオレを見つめながら、何度も涙をぬぐってくれる。
オレは・・・少しだけ、自惚れてもいいのだろうか?
「樹・・・」
オレの髪を指で掬いながら唇を重ねる。
少しだけ、開いていた口を舌で抉じ開けられ、口内でオレの舌と絡ませる。
「んっ・・・・あっ・・・」
口外で舌を絡めながら尚吾さんの手はズボンの中に進入し、ペニスを緩く握り、そのまま扱き始める。
「あっ・・・ああっ」
オレの体から力が抜けた頃を見計らってアナルに入り込み、解すように指を動かす。
昨日までバイブを銜え込んでいたそこは、先端から溢れた蜜でさらに挿れやすくなり、指をなんなく受け入れた。
「ああっ・・・んっ」
指が二本に増えたかと思うとすぐ三本になり、尚吾さんが触れている所は直接神経を触れられているようで、指を少し動かされただけで喘いでしまう。
「もう・・・いいかな」
指を引き抜かれ、喪失感に体を震わせる。
尚吾さんのペニスに触れると、尚吾さんも勃起していて、オレでも感じてくれるんだって思った。
「大丈夫?」
こんなバイトとはいえ、オレに気遣ってくれる。
恋人の有無は解らないけど、今、この時くらいはと、背に腕を回すと、尚吾さんは抱きかかえるようにしながらゆっくりと腰を進めていく。
「ああっ・・・んあっ・・・」
挿れる時はゆっくりだったのに、全部入りきると一気に奥を突かれる。
「ひあっ・・・あっ・・んっ」
快感で何も考えられなくて、必死で尚吾さんにしがみ付いた。
「やあっ・・!」
いきなり対面座位にされ、結合部が更に深くなる。
「好きだよ、樹」
ゆっくりと、じれったく性下にゆさぶられながら耳元で言われた。
「ウソだっ・・・!」
「本当だよ。樹は?」
「オレもっ・・!」
好きだって言いたかったのに、今までじれったく動いていたのとは反対に、急に深く突き上げられ、頭の中が真っ白になった。
もはや感じるのは快感と尚吾さんの体温だけで。
尚吾さんもいつもみたいに余裕がなさそうで、息が荒くなっている。
「もう・・・イク・・・っ!」
「っ・・・!」
オレは無意識のうちに尚吾さんのを締め付けた途端、中に熱いモノが放たれ、オレも吐精した。
途端に体から力が抜け、そのまま尚吾さんに体を預け、オレは放心していた。
「樹・・・?」
遠くで尚吾さんの呼ぶ声がする。もう駄目だって思ったとき、軽く頬を叩かれた。
「ごめんな。また気絶されたらかなわないからな」
叩いた事を詫びるように、尚吾さんは苦笑いをしている。