第六章 手紙
「統馬、そこの本をダンボールに詰めてくれる?」
日が昇りきってからやっと起きた真佐海たちは、起きるなりすぐに荷造りを始めた。
「周助さんの部屋って随分こざっぱりしてますね」
「周助は寝るくらいしか帰ってこないから、必要最低限の物しか置いていないんだ。だいたいは実家に置いているし」
箪笥代わりの収納ケースにきちんと整理されて入っているセーターを次々とダンボールへと入れ替えていた真佐海は、その中に昔自分が贈った衣服を見つけた。
それは一枚のみならず、真佐海が贈ったものはすべて、ここ、真佐海の家に置いていたのだ。
整理したはずの気持ちが、また揺らぐ。
こんな物を見せられたら、勘違いをしてしまうのに。
真佐海は、統馬に見られないようにそっと、目頭に溜まった涙を拭いた。
ここで揺らいでは行けないと思うのに。
今は統馬がいるから、と思うのに、溢れてくる涙を止められない。
「真佐海さん、これは?」
何かを見つけた統馬が真佐海に目をやると、セーターを握り締めたまま、小さく震えていた。
「何でもないからっ・・・・・・」
そう、繰り返す真佐海を、統馬は何も言わずに抱きしめた。
「まだ、完全に吹っ切れていないの、解かってるから。そんなに追い詰めないで」
こういうとき、年下なのにどうして自分より気持ちが大人なんだろう、と思って、さらに情けなくなってしまう。
だが、逆に縋りたくなってしまうのもまた事実で。
「辛いなら、オレが荷造りしようか?」
その問いに小さく頭を振って、大丈夫だと真佐海は告げた。
「無理しないで。あと・・・・・・これ、本の間から出てきた」
統馬が真佐海へ差し出したものは、一通の手紙だった。
真新しい封筒の中央には真佐海の名前がかかれ、差出人は見なくてもわかった。
中には一通の手紙。
封筒同様に、真っ白な紙が一枚入っている。
真佐海は、躊躇いながらもそれを開けた。