第五章  安らげる場所

ふといつもは感じない人の温もりを感じ、真佐海は重い瞼を開いた。

「・・・・・・?」

体には布団がかけられているが、その下は裸で、隣では統馬が真佐海を抱きしめるように眠っていた。

そして、身に覚えのある腰の軽い鈍痛。

「何があったんだっけ・・・・・・?」

思い出せる限りの記憶を辿って行くが、殆ど覚えていないに等しい。

しかし、この鈍痛は、過去に経験した事があった。

「俺・・・・・・やっちゃったんだ」

真佐海は自分に呆れたように深くため息をつく。


どうやら周助と話をした後、酒を飲んだ真佐海は、それが少量だったにもかかわらず酔ってしまったらしい。

覚えているのは所々で、その中に自分の痴態も混じっている。



枕元の時計を見ると時刻は深夜二時。

夜中に目が覚めたわりにはなぜかとてもすっきりとしている。

というのも、何年もこうして誰かの隣で眠るというのはなかった。

周助と別れて以来、真佐海は誰かの隣で眠る事をずっと望んでいた。

けれど、どこかで深入りしてはいけないと忠告する声が聞こえた。

これは今日だけかもしれないと思うと、真佐海の気分は一気に下がっていった。

それを追い払おうと、ベッドから降りようと体を動かすと、真佐海は統馬の腕を掴んでいた事に気がついた。

なぜかは覚えていない。

でも、離そうと思えば容易に解けるものだったのに、統馬はそのままにしてくれていた。

まるで子供のようだと真佐海は自分で思った。

快楽に溺れ、隣に人がいる事で安心している。

一生こんな風には過ごせないと思っていたのに。

「・・・・・・真佐海さん?」

「ごめん、起こした?ちょっと風呂に入ってくる」

真佐海は握っていた腕を放し、赤くなっている顔を隠すように急いでバスルームへ駆け込んだ。