第五章  安らげる場所

店を閉め、二階の自宅部分に統馬をあげると、先にシャワーを浴びさせた。

「真佐海さん、タオルとバスローブ、ありがとうございます。こ れは周助さんの?」

「うん。それには一度も袖を通さなかったんだけどね」

入れ違いでシャワーを浴び、ソファーに座っていた統馬にお茶を出すと、真佐海は隣に腰掛けた。

「真佐海さん、本当にしていいの?」

腰に手を回し、真佐海を引き寄せると一度軽くキスをしてから真佐海に尋ねた。

「・・・・・・うん」

「止めるなら今だよ。オレ、途中で止められる自信ないし」

「大丈夫だよ。途中で止めてなんて言わないから」

真佐海は自ら統馬に口付けると、統馬は真佐海の歯列をなぞり、口内を貪った。

 

「あっ・・・・・・」

統馬は真佐海を気遣って、真佐海が統馬を受け入れる場所を約三十分に亘って丁寧に解した。

そのせいで、真佐海は二回もイかせられ、統馬もまた、一度達していた。

「んっ・・・・・・あっ・・・・・・」

一度達しても、統馬の下肢は衰えなかった。

真佐海は確かに快楽を感じていた。

もう何年も経っていて、周助との事は覚えていないが、何かが満たされていく感じがした。

「真佐海さん・・・・・・真佐海っ・・・・・・」

息遣いと、名前の呼び方が変わった事で、統馬がそろそろ達しそうだというのを真佐海は察した。

「統、馬・・・・・・もうっ・・・・・・」

抱きしめられている真佐海の体が、大きく反る。

その細い体を壊さないように、且つ自分の快楽を得られるように統馬は深く体を打ち込んだ。

「んっ・・・・・・あぁ・・・・・・!」

一緒に、と合図をしなくても、二人は同時に達した。

 

達した直後の真佐海の体は、仄かに赤く染まり、熱を持っていた。

暑い、と感じたのと同時に、真佐海は体の力が全部抜けて言ったような脱力感に襲われ、統馬の腕に体を預けた。

統馬はゆっくりと真佐海を横たわらせて自身を引き抜く。

その時、真佐海は突然な空虚感に襲われ、統馬の腕を掴んでしまった。

「真佐海さん、乾く前に拭かないと・・・・・・」

言いかけて、統馬は口を噤んだ。

真佐海がとても不安気な表情をしていて、とてもその場を離れられる事はできなかった。

「どうした・・・・・・?」

今にも涙を零しそうな表情に、統馬は内心慌てた。

「・・・・・・かないで」

冒頭は掠れて聞こえなかったが、その唇は明らかに行かないで、と言っていた。

「ここにいるよ」

もう一度ベッドに潜り込み、柔らかい真佐海の髪を鋤いていると、真佐海は静かな寝息を立て始めた。

統馬の腕を掴む手は、決して強くはない。

しかし、さっきの不安気な表情とは打って変わり、幸せそうに眠る真佐海の腕を、統馬は放す事が出来なかった。