第三章  十年の月日

一頻り泣くと、一旦涙は止まり、時々しゃくりあげるような声が出ていた。

窓から差し込む明るい光はなく、カーテンを閉めていない部屋は薄暗かった。


真佐海はそのままバスルームに入り、泣きはらした顔にシャワーをかけ、目が腫れないようにする。

食欲もないから夕飯は食べていない。

それに、なんだか熱っぽくて体がだるい。

けれど、明日は休めない。

統馬も来るだろうし、贔屓してもらっている常連客に迷惑をかける事になる。


それ以前に、周助に心配されたくなかった。

今、周助に優しくされたら自分が何を言うか判らない。

もしかしたら、罵声を浴びせるかもしれない。

あるいは、もう一度抱いてくれと言ってしまうかもしれなかった。


そんな自分が怖くて、真佐海は今まで混乱状態の時は周助と接しないようにしていた。

今更その努力を無駄にしたくなかった。